全てのものは『陰』と『陽』に分けられバランスを保つ。『陰陽論』について知る。
『陰陽論』とは、自然界の全てのものを「陰」と「陽」のどちらかに分けられるという考え方です。太陽と月、空と大地など。それは色や食材にも当てはまります。食材の『陰』と『陽』の性質を知り身体のバランスをとり、健康を維持する。『陰陽論』を学びます。
『陰陽論』の考え方
「陽気な人」「陰気な人」などとよく耳にしますが、陰陽とはどちらが悪いなどということではなく、自分の体が今どちら側に偏っているのかを見極めバランスを取るということが大事です。
「陰陽論」とは、森羅万象、自然界の全てのものを「陰」と「陽」のどちらかに分けらるという考え方です。
太陽が「陽」で月が「陰」
昼が「陽」で夜が「陰」
空が「陽」で大地が「陰」
といった感じです。
ただし、この「陰陽」は一定して定まっているものではなく、季節や状況によって変化します。
例えば、昼でも雲が多く太陽が隠れていれば「陰」の要素が強まります。
「陰」と「陽」はどちらかに偏ることなく、昼と夜、季節の移り変わりなど日々の生活のリズムの中でバランスを保っているものなのです。
東洋医学の視点から見ると、
五臓六腑の胃や小腸、大腸など「腑」は陽、
心臓、肝臓など「臓」は陰となります。
体内の陰陽のバランスが崩れると人は病気になりますが、同時に体は崩れたバランスを元に戻そうとする力が働きます。この力を「自然治癒力」と言います。
陰陽のバランスをとるということは、自然治癒力を高めるということになります。
陰と陽の特徴
陰と陽はそれぞれバランスをとって成り立っていますが、いくつかの特徴があります。
陰陽互根(いんようごこん)
陰が陽を生み、陽が陰を生む。
陰があるから陽がある。
陰と陽は表裏一体であり、一方だけが存在することはあり得ないという考え方です。
陰陽消長(いんようしょうちょう)
陰陽の量的な変化を言います。
例えば、昼から夜にかけて陽の要素が減少しますが逆に陰の要素は増加します。
このように、陰陽とは一定のものではなく、どちらかが増長すればどちらかが減少します。
陰陽転化(いんようてんか)
陰陽消長が量的な変化であるのに対し陰陽転化は質的な変化といえます。
春から夏にかけては陽の性質が強いですが、秋から冬に季節が巡ると次第に陽の性質が弱まり、陰の性質へと変化していきます。
このように陰と陽は、頂点に達すると陰は陽に、陽は陰に転化することがあります。
陰陽制約(いんようせいやく)
陰と陽、お互いにバランスを取り合うことです。
どちらか一方に偏り過ぎないように両者がお互いに対立、依存、抑制しながら調和を保っています。
人体においての陰陽
人の体も陰性、陽性に分けることができます。
一般的な特徴は以下のようになります。
陰性体質の人
- 猫背
- 顔は面長
- 肌の色が白っぽい、青白い
- 声が小さい
- ゆっくりと話す
- 体温が低め
- 尿の色が薄い
- なんとなく元気がなく、消極的
陽性体質の人
- 体格が良い
- 丸顔
- 肌の色は褐色で赤ら顔
- 声が大きい
- 話し方が早口
- 尿の色が濃い
- 体温が高め
- 積極的で頑固
食材においての陰陽
食材においても陰性と陽性に分けられます。
陰性の食材とは
体を冷やす食材のことで、暖かい気節に収穫された野菜や果物、熱帯地方など暑い土地で採れた食材を言います。
また、青色や白色、黄色、緑色などの食材。地上に育ち、水分が多く比較的柔らかいものは陰性の食材といえます。
レタス、ブロッコリー、もやし、パパイヤなどがそれにあたります。
暑い地域に暮らす人たちは体が暑いので、その土地で採れた食材は体を冷やす作用があります。
陽性の食材とは
陰性とは逆に体を温める食材のことで、寒い季節に収穫された野菜や果物、寒冷な土地で採れた食材を言います。
また、黄色やオレンジ色、黒色、赤色などの食材、土の中で育ち、水分が少なく質感の硬いものは陽性の食材といえます。
生姜、人参、蓮根、牛蒡などが陽性食材です。
寒い地域に暮らす人たちは体を温めるためその土地で採れた陽性の食材を摂ります。
間性の食材
中庸(ちゅうよう)とも呼ばれ陰性、陽性どちらにも偏っていない食材を言います。
人間の体質も陽性、陰性どちらにも偏らず、より「間性」に近づけることが健康に繋がります。
カリウムとナトリウム
カリウムは生野菜や果物に多く含まれ、塩分や余分な水分を体外へ排出する働きがあり、体を冷やす陰性の働きがあります。
ナトリウムといえば思い浮かぶのは塩ですが、塩は脱水作用があり水分が抜ければ体温が上がります。なので塩は陽性の食材です。
一般的に、カリウムを多く含んでいる食材は陰性食材で、ナトリウムを多く含んでいる食材は陽性食材といえます。
大まかに食材の性質を分類すると
果物や油脂類、甘いものは「陰性」
肉類、魚介類は「陽性」
玄米、大豆、小豆など穀類や豆類、イモ類は「間性」
野菜は種類によって「陰性」から「陽性」まであります。
逆転する陰性と陽性
一つの食材の中に部分ごとに存在する陰と陽
大根の場合、間性食材とされていますが、細かく見ていくと葉の部分は「陰性」。根の部分は「陽性」となります。
一般に1本の大根でも、土から顔を出し、上に向かって伸びていく大根の葉は「陰性」。
土の中で下に向かって伸びていく根の部分は「陽性」と分類されます。
加工することで変わる陰と陽
果物はほとんどが陰性食材ですが缶詰に加工する際、熱を加えるので生の状態より陽性の性質が強くなります。
また、間性食材である大豆に納豆菌を加えて発酵させ熱が加わることにより陽性食材に変化します。
調理法によって変わる陰と陽
ブロッコリーは陰性食材で体を冷やしますが、シチューなどに入れて温めて食べれば体を冷やしにくいものとなり、陽性食材である粉チーズを加えればさらに陽性の性質が強くなります。
キュウリは陰性の食材ですが浅漬けにしたり、塩もみをすることで陽性食品に変わります。
夏を代表する果物、スイカは体を冷やす陰性の食材ですが、陽性の性質を持つ塩を振って食べることによって、陰性と陽性のバランスを保つことができます。
世の中、陰性の食べ物が圧倒的に多いのですが、現代の多くの日本人もまた陰性体質です。体が冷えているのに体を温める食材より体を冷やす食材の方が多いのです。ならばどうするか?
そんな時は、食材を焼く、蒸す、煮るなど火を通して温める、乾燥させる、発酵させるなどすると陰性から陽性に変えることができます。
このように食材の性質を知り、陰性の食材と陽性の食材をうまく組み合わせてバランスを保つのが健康の維持に繋がります。
栄養はそれぞれの体質によって違う
例えば、「減塩醤油」「減塩味噌」「減塩梅干し」など塩はなんとなく悪者的な扱いをされています。
健康な体でいるためには、食材の陰性、陽性のバランスをとり、「間性」の状態を維持する必要があります。
塩は陽性食品であり体を温める作用があるので、体温が低めの陰性体質の人には体に良い食品となりますが、体温が高めの陽性体質の人に塩は良い食品とはいえないと考えられます。
また、南国に住む人はその土地で採れた食べ物を、
北国に暮らす人はその土地で採れた食べ物を摂るのが一番良いのではないでしょうか。
まとめ
日本には四季があり、人間の体も四季の移り変わりによって変化します。
夏にはスイカやそうめんなど冷たいものが食べたくなり、冬には鍋物が恋しくなります。
自然はうまくできていて、夏には暑い日に食べたくなるものが、冬には寒い日に食べたくなるものがちゃんと海や山、畑などで採れるようになっているのです。
人はその時食べたいもの、食べて美味しいと感じるもの。その季節の旬のものをいただく。それが人間の健康にとって一番なのではな